1998年8月29日土曜日

ゲノムの三次元構造と細胞の記憶


図:GENIEのロゴ(GENIEから引用)



今朝の素材は、8月28日にNorthwestern Universityが発表した新しい研究センター「GENIE(Center for Genome Intelligence Engineering)」です。米国立科学財団(NSF)が5年間で3000万ドルを拠出し、物理・生物・工学・AI・医学を横断して、ゲノムの三次元構造と細胞の「記憶」を調べます。

①要点
私たちはゲノムというと、A・T・G・Cの塩基配列をまず思い浮かべます。しかし細胞核内のDNAは一本の文字列として漂っているわけではなく、折り畳まれて複雑な三次元構造をつくっています。この空間配置によって、どの遺伝子が読み出されやすいかが変わる。GENIEは、この「ゲノムの幾何学」を読み、さらに将来的には操作する技術を目標にしています。Northwestern側は、過去の活動履歴が三次元構造に残り、後の応答に影響する「転写記憶」にも注目しています。

②面白さ
DNA配列をコンピューターのプログラムと見なす比喩は古くからあります。しかしここでは、情報は文字列だけでなく、その文字列が物理空間でどう折り畳まれているかにも宿る。同じゲノムを持つ細胞が神経にも皮膚にもなる理由を、「配列+立体構造+履歴」という多層情報として捉える発想です。

③KAMEKIXとの接続
これは以前考えてきた「ゲノム―プロテオーム型AI」にかなり近い問題を、生物学側から突きつけます。AIでも、同じ基礎モデルを持っていても、外部記憶や文脈、履歴の与え方で振る舞いが変わる。細胞でも、同じDNA配列を持ちながら、過去の状態と構造によって次の反応が変わる。もちろん両者を同一視するのは危険ですが、「情報とは配列だけなのか」という共通の問いは立てられます。

④記事の核
DNAは「生命の設計図」であるという比喩の修正でしょう。DNAは設計図ではなく、折り方と履歴を含む可塑的な媒体なのではないか。そこからAIの記憶、エピジェネティクス、細胞分化へ広げられます。

[2]NSFの発表

0 件のコメント:

コメントを投稿