1998年8月28日金曜日

昭和は繰り返すのか


図:片山杜秀『反復する昭和史』の書影(新潮新書から引用)

今朝の一冊は、片山杜秀『反復する昭和史』(新潮新書)。2026年8月19日刊、256頁、1,056円です。著者は思想史研究者・音楽評論家で、『未完のファシズム』などでも知られます。出版社は本書を、対米従属、保守・愛国、石油危機、テロ、戦争、核不安といった現在の論点を、昭和の出来事と重ねて読む本として位置づけています。([新潮社][1])

題名の「反復」は、歴史が同じ形で再現するという意味ではありません。むしろ、状況が変わっても似た政治的配置や言説が再出現する、という見方です。目次には「二大保守政党という幻」「戦後政治は吉田・岸・鳩山&河野だけで分かる!」などが並び、個々の事件の年代順説明より、現在と過去の「似方」を拾う構成になっています。もとは『週刊新潮』の連載コラムをまとめた本なので、体系的な昭和史というより、歴史的エピソードを現在への補助線として使う読み物と考えるのが適切でしょう。([新潮社][1])

面白いのは、「歴史から学べ」という常套句を、そのまま信じていないところです。もし人間が本当に歴史から簡単に学べるなら、似た失敗は繰り返されないはずです。本書の問いはむしろ、日本は過去から何を学ばなかったのか、なぜ似た構図が再び生じるのか、にあります。歴史を教訓集ではなく、現在の前提を疑うための比較材料として使うわけです。([新潮社][1])

誰に向くか。昭和史を一から学ぶ入門書というより、戦後政治や現在の政治をある程度知っていて、「この構図は以前にもなかったか」と考えたい人に向きます。片山の広い読書量を利用して、政治史だけでなく表現者や当時の言論にも寄り道できるのも魅力でしょう。

注意点もあります。「歴史は繰り返す」という発想は強力ですが、似ている点だけを選べば、どんな現在にも過去の類例を見つけられます。類似だけでなく、何が決定的に違うのかを併読しないと、歴史が予言書になってしまう。その危うさを意識しながら読むと、むしろ本書の使い道は広がりそうです。


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