今朝の一冊は、岩崎正洋・松尾秀哉編『世界政治5――新たな政治の課題』(筑摩書房、2026年8月4日刊、ちくま新書、288頁、1078円)です。シリーズ全5巻の最終巻で、ジェンダー平等、排外主義、政治の司法化、AI、パンデミック、薬物問題など、従来の「政党」「選挙」「体制」といった枠だけでは捉えにくい現代政治の論点を、比較政治学の方法で横断します。([筑摩書房][1])
比較政治学とは、複数の国や制度を比べることで、ある政治現象がその国固有の事情なのか、より一般的な構造なのかを見分けようとする分野です。本書の面白さは、「日本のAI政策」「フィリピンの薬物問題」のように各国を別々に眺めるのではなく、異なる政治課題に対して制度や政治体制がどう作用するかを見るところにあります。たとえばパンデミック対策については、政治体制の違いが政策対応にどう影響するかを扱う章があることが確認できます。([Wikipedia][2])
とくに惹かれるのは、AIを技術論ではなく政治制度の問題として位置づけている点です。AIについて「性能が高いか」「仕事を奪うか」だけを問うのではなく、誰がルールを決め、誰が監視し、どの権利を守るのかという政治の問題として扱う。この視点に立つと、AIは新技術というより、既存の民主主義制度を照らす試験紙になります。
本書は単著ではなく、多数の研究者による分担執筆です。したがって全体が一本の物語として進む本というより、現代政治の論点を複数の窓から見るアンソロジーに近いはずです。そこは好みが分かれるでしょう。一方で、一つの立場に寄りかからず、国ごとの差異を見比べたい人には向いています。フィリピンの違法薬物政策やLGBTをめぐる政治など、かなり具体的なテーマも含まれています。([筑摩書房][1])
未読部分については評価できません。ただ、出版社の内容紹介を見る限り、「AIと民主主義」「ポピュリズム」「政治制度」を個別テーマとしてではなく、比較可能な政治現象として並べ直す入口として有望です。最近の政治を追うほど個別事件に引きずられがちですが、その背後にある制度差を見たいときに読む価値がありそうです。
[1]「世界政治5−新たな政治の課題」(岩崎正洋,筑摩書房)
[2]安中進(Wikipedia)
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