昨日8月21日に改めて紹介された東京科学大学などの研究が、記事の種として面白いです。光を当てた物質が通常とは異なる「光誘起隠れ状態」へ移る、その最初の30フェムト秒を捉えた研究です。フェムト秒は1000兆分の1秒。論文自体は7月22日付の *Physical Review Letters* に掲載されています。([Science Tokyo Prospective students][1])
対象はMOF(金属有機構造体:金属イオンと有機分子を組み合わせた結晶性物質)。研究チームはわずか6フェムト秒のレーザーパルスを使った時間分解反射分光で、光照射直後の反射スペクトルを追跡しました。すると最終状態へ一足飛びに移るのではなく、まず隣接サイト間の結合が強・弱・強・弱と交互になるボンド秩序波という電子状態が一瞬現れ、その後に原子がわずかに移動して隠れ状態が成立する、という順序が理論計算との比較から示されました。([Science Tokyo Prospective students][1])
ここでKAMEKIX向きなのは「30フェムト秒」という記録そのものより、物質の形が変わる前に電子の関係が変わるという因果の順番です。私たちは相転移というと、原子や分子が並び替わって性質が変わる、と考えがちです。しかしこの例では、電子がまず新しい結合パターンをつくり、それを追うように原子が動く。いわば電子が「仮設の設計図」を先に描いているように見えます。
記事にするなら、ここから「物質の状態とは何によって決まるのか」へ広げられます。温度を上げ下げして平衡状態を選ばせる従来の物性物理に対し、超短パルス光は、熱平衡では普通たどり着けない状態へ物質を送り込める。しかも今回の結果は、その途中経路そのものを観測対象にしています。将来の高速デバイスへの応用はまだ可能性の段階ですが、物性を「完成した状態」ではなく「生成される過程」として見るところが魅力です。([Science Tokyo Prospective students][1])
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